<自民>新党結成の動き本格化 分裂に現実味(毎日新聞)

 自民党執行部への批判を強めていた与謝野馨元財務相と園田博之前幹事長代理が新党結成に向けて本格的に動き始めた。無所属の平沼赳夫元経済産業相との連携も現実味を帯び、3月の鳩山邦夫元総務相離党の際にはばらばらだった「新党」像がしだいに焦点を結びつつある。与謝野、平沼両氏とも今夏の参院選の標的を民主党と定め、自民党とは敵対しないとしているものの、挙党一致を目指して両院議員懇談会を開催中の自民党にとっては大きなダメージとなった。

 ◇反転攻勢つまずく

 与謝野氏は消費税率引き上げを含む税制抜本改革による財政再建が持論。平沼氏は自主憲法制定など保守の理念を前面に掲げる。両氏はもともと関係が近いとはいえ、方向性は必ずしも一致しない。園田氏は3月16日の毎日新聞のインタビューで「平沼さんは『自分だけだとタカ派の印象が強すぎる。今の時代はタカ派もハト派もない』という気持ちのようだ」と語り、連携は可能との見方を示していた。

 関係者によると、与謝野氏側近と平沼氏は今年初めから、協議を重ねてきたという。昨年の衆院選での民主党の大勝で、平沼氏が目指す「第三極」作りが難航したことも、両氏の接近を後押ししたといえる。

 与謝野氏周辺は「激動のときがきた。これは自民党分裂ということだ」と語る。与謝野氏は党内で勉強会「正しいことを考え実行する会」を主宰しているが、「考え方は説明したが勧誘はしていない」(関係者)とされる。一方、平沼氏は「平沼グループ」の小泉龍司、城内実両衆院議員について「新党設立メンバーには入らない」と語っており、両氏が連携しても同調者がどこまで広がるかは読み切れない。

 新党結成が自民党への打撃になり、結果的に民主党を利することは回避したいという考えでも両氏は共通する。新党結成を急ぐのは「遅くなるほど自民党が分裂したイメージになる」(与謝野氏周辺)と懸念するためだ。

 とはいえ、自民党は3月31日の鳩山由紀夫首相との党首討論で谷垣禎一総裁が何とか面目を保ち、反転攻勢に打って出ようとしていたばかり。与謝野氏らが新党結成に踏み切れば、鳩山氏の離党以上に党内に動揺が広がるのは確実だ。

 大島理森幹事長は2日夕、党本部で記者団に「あそこまで本(月刊誌)に書いている。その前に党をお離れになる必要があるのではないか」と述べ、与謝野氏らの離党は避けられないとの見通しを示した。鳩山氏は2日夜、東京都内で記者団から与謝野氏らとの連携を問われ「今は申し上げられない」とかわしたが、「非常にいい動きだ」と歓迎した。【中田卓二、野原大輔】

 ◇長年模索続けた平沼氏

 与謝野、平沼両氏とも政界再編や新党構想を口にし続けてきた。

 平沼氏は05年の郵政解散で自民党を離党した後、長く新党構想を描いてきた。05年衆院選では同じ郵政造反組の亀井静香氏(現金融・郵政担当相)らが結成した国民新党には加わらず、無所属で当選した。

 安倍晋三首相(当時)は06年12月、翌年の参院選をにらんで郵政造反組11人を自民党に復党させたが、同党との交渉の中心だった平沼氏は民営化に賛成する誓約書の提出を拒み、無所属にとどまった。07年参院選で自民党が惨敗した後、再び平沼氏の復党が取りざたされた際には、安倍氏の突然の退陣で白紙に。この際、尽力した一人が当時官房長官の与謝野氏だった。

 その後、平沼氏は保守勢力を結集した「第三極」に軸足を移す。しかし、昨年の衆院選で保守系無所属の「平沼グループ」として17人を擁立したものの、当選者は平沼氏ら3人にとどまり、国会議員5人以上の政党要件を満たせなかった。昨年11月、国民新党代表の亀井氏による新党結成の呼びかけにも応じなかった。平沼氏が民主党政権入りを嫌ったとされる。

 与謝野氏も与党時代からたびたび政界再編に言及してきたが、小泉内閣以降、政府や党の要職を歴任する中で、実際に行動に移すことはなかった。【坂口裕彦】

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